【脱サラ就農に役立つ!】超高収益有機農場のNo-Till(不耕起)手法

新規就農

Neversink Farmは、ニューヨーク州キャッツキル山地に位置する約0.6haの有機農場で、単位面積あたりの生産性と収益性が全米トップクラスの農場として広く知られています。

具体的な数値としては約0.6haの農地で年間約40万ドル(約6,000万円※1USD=150円換算)の収益を上げており、反収(10アールあたりの収益)約1,000万円に相当します。

このNeversink Farmの高い生産性を支える要素の1つが「No-Till(不耕起)」です。No-Tillとは、土壌を反転させず、土壌の層を保ちながら自然な分解プロセスを活用する農法です。これは単に雑草を減らすだけでなく、土壌の生物多様性を高め、農場全体の生産効率を向上させる可能性を秘めています。

この記事では、Neversink FarmのNo-Till農法について、その基本原則から実践例、さらに課題や可能性までを解説します。どのような農法を採用しようか迷う新規就農者によって、一考に値する先行事例であると考えます。

1. No-Till(不耕起)とは何か

No-Tillの定義と農場における重要性

土壌を反転させると、有機物が急速に分解され、土壌の健康が長期的に損なわれる可能性がある

No-Tillとは、土壌を反転させずに作物を育てる農法を指します。この手法では、耕運機やトラクターによる深耕を行わず、表層に堆肥や有機肥料を加えるのみで土壌の健康を保ちます。このため、同農場では土壌の層を維持することを重視しています。

また、No-Tillの目的は、単に機械の使用を減らすだけではありません。自然の分解プロセスを最大限に活用し、微生物やミミズなどの土壌生物が活発に活動できる環境を整えることが主眼です。この方法により、土壌の肥沃度を向上させるだけでなく、作物の品質や収穫量も高めることができます。環境保護の観点からも、No-Tillは非常に効果的であり、持続可能な農業の実現に大きく寄与する手法といえるでしょう。


伝統的な耕作法との比較

伝統的な耕作法は短期的には効果的かもしれないが、長期的な土壌の健康を損なう可能性がある

伝統的な耕作法では、耕運機やトラクターによる深耕が一般的です。この方法では、堆肥や肥料が土壌深部まで均一に混ざるため、初期の作物の成長が促進されます。しかし、同時に土壌層が乱され、雑草の種子が表層に引き上げられることで雑草の増加が問題となります。さらに、有機物が急速に分解されることで、土壌の肥沃度が時間とともに低下するリスクもあります。

一方、No-Tillではこれらの問題を回避できます。土壌層を保つことで、雑草の種子が深部に留まり発芽を抑制。さらに、堆肥や有機肥料を表層に追加することで、土壌中の微生物の働きを活性化し、肥料の持続的な供給が可能になります。コナー氏も、「伝統的な耕作法は短期的には効果的かもしれないが、長期的な土壌の健康を損なう可能性がある」と指摘しています。No-Tillは、このような長期的な視点で土壌を守るための有効な選択肢です。

2. Neversink Farmが実践するNo-Tillの基本原則

土壌の層を維持する意義

Neversink Farmでは、土壌層を乱さないことをNo-Tillの核心として位置づけています。このアプローチの重要性について、コナー氏は「土壌を反転させないことで、有機物の分解プロセスが自然に進み、ミミズや微生物が活発に活動できる環境が整う」と説明します。実際、土壌を反転させると、堆肥や有機物が急速に分解し、長期的には土壌の肥沃度が低下する可能性があります。

また、土壌層を維持することで、雑草の種子が深部に留まり、発芽を抑える効果もあります。Neversink Farmでは、ブロードフォークを使って軽く土壌を通気しながら、層を崩さない工夫をしています。さらに、植物残渣や堆肥を毎年表層に追加することで、自然な層の厚みが増し、土壌の物理的特性が改善されます。これにより、農場全体の生産性が向上し、環境への負担も軽減されます。土壌の層を守るという哲学は、持続可能な農業の鍵となるでしょう。

土壌改良と有機物の活用

Neversink Farmでは、土壌改良の中心に有機物の活用を据えています。堆肥や有機肥料は、表層に均一に散布され、その後、軽く整地されます。整地の際にはティラーを用いて表面を薄く撫でる程度で、深く掘り返すことはありません。この手法により、堆肥が緩やかに分解され、微生物が有機物を土壌内に自然に取り込む環境が作られます。

「不均一に散布された肥料は、作物の成長にムラを生じさせる」とコナー氏は指摘します。そのため、肥料を均一に散布し、整地することが重要です。また、堆肥だけでなく、植物残渣やその他の有機物も活用されます。例えば、収穫後の野菜の根や葉はそのまま畝に残し、次の作物の栄養源として利用されます。このプロセスは、土壌改良の手間を軽減するとともに、持続可能な農業の基盤を築く方法として注目されています。

No-Till手法がもたらす雑草管理の効果

No-Tillの利点として挙げられるのが、雑草管理の効果です。従来の耕作法では、土壌を反転させることで雑草の種子が表面に引き上げられ、発芽を助長してしまいます。一方で、No-Tillでは土壌を反転しないため、種子が深部に留まり、発芽のリスクが低下します。さらに、発芽直後の段階で雑草を取り除くことが重要であり、この段階での除去は労働コストを大幅に削減します。

「雑草が小さいうちに除去することで、畝の整然とした管理が可能になる」とコナー氏は説明します。Neversink Farmでは、ワイヤー・ホー(Wire Hoe)やコリニア・ホー(Collinear Hoe)といった精密耕作ツールを使用し、効率的に雑草を管理しています。このようなツールの活用により、畝全体の雑草が少なくなり、作物の収穫作業もスムーズに行えるようになります。雑草管理は単なる農作業の一環ではなく、全体の収益性にも直接影響を与える重要な要素です。

Neversink Farmの雑草管理手法については、こちらの記事で詳細に解説しています。

3. No-Tillにおける冬季の畝のマネジメント

①冬のカバークロップとその役割

Neversink Farmでは、冬季の畝保護と土壌改善のためにカバークロップが活用されています。カバークロップとは、冬の間に作付けしない畝に栽培する植物のことで、土壌を保護し、有機物を供給する役割を担います。同農場では、エンドウ豆やライグラスがよく使用されます。

「これらの作物は冬の間に枯れて、春には簡単に分解されます」とコナー氏は説明します。枯れたカバークロップは畝の表面にマット状に広がり、土壌を覆うことで侵食を防ぎ、春の作付け準備を簡素化します。

カバークロップの利点は、冬季の寒冷地でも土壌を守り、有機物の供給源として活用できる点です。Neversink Farmでは、春に堆肥や肥料をカバークロップの上から散布し、ティラーを使って表面を軽く整地します。これにより、土壌層を維持しつつ、次の作物の生育に適した環境を整えています。カバークロップを取り入れることで、畝の寿命を延ばし、長期的な土壌の健康を守ることができます。


②植物残渣をそのまま活用する方法

Neversink Farmでは、収穫後の植物残渣を活用する手法も実践されています。例えば、収穫を終えたケールやスイスチャードの茎や根を畝に残すことで、次作の肥料として活用します。「収穫後の植物残渣は、春までに自然に分解され、土壌に戻ります」とコナー氏は語ります。この方法は、追加の作業を必要とせず、労力とコストを削減するうえで有効です。

また、作物残渣を残すことで、土壌が冬季の寒さや風から保護されます。例えば、秋の収穫が遅れた場合でも、植物残渣が畝の土壌を固定し、侵食を防ぐ効果があります。春には、残渣が自然に崩れて堆肥化しているため、ティラーで軽く表面を整えるだけで新しい作物を植える準備が整います。このように、植物残渣を畝の一部として再利用することで、環境への負荷を軽減しながら、土壌の健康を維持することが可能です。


③越冬作物を利用して土壌を守るテクニック

越冬作物は、Neversink Farmで土壌保護と収益向上の両面で活用されています。例えば、ニンニクや玉ねぎなどの作物を秋に植え付け、春に収穫することで、冬季の畝を効果的に利用しています。これらの作物は、冬季の間に土壌を覆い、侵食や乾燥を防ぐ役割を果たします。「越冬作物は、春に収穫可能な状態で畝を保護し続けるため、一石二鳥の手法です」とコナー氏は言います。

また、越冬作物の植え付けには、適切な肥料と堆肥の散布が欠かせません。Neversink Farmでは、薄く均一に堆肥を広げることで、作物の健全な成長をサポートしています。春には、越冬作物が収穫されるだけでなく、土壌が柔らかく整い、新たな作付けが容易になります。このテクニックは、冬季でも畝を有効活用し、収益を維持しつつ土壌の健康を守るための実践的な方法です。

4. No-Tillに適したツールと技術

ブロードフォーク:土壌通気と施肥の鍵

ブロードフォークは、Neversink FarmのNo-Till手法において欠かせないツールです。この道具は、土壌層を崩さずに通気性を向上させるために使われます。「ブロードフォークは、土壌に空気を入れ、微生物の活動を促進する役割を果たします」とコナー氏は説明します。特に春の畝が固く締まっている場合や、有機肥料を深く浸透させたいときに効果を発揮します。

ブロードフォークの使い方はシンプルですが、適切な選び方も重要です。コナー氏は「丸みを帯びた大きな爪のついたフォークを選ぶべきです。これにより、土壌を効率よく緩め、通気性を改善できます」と述べています。また、ブロードフォークは雑草や石を取り除く作業にも役立ちます。特に石の除去は長期的な土壌改善に寄与し、畝の生産性を高める一助となります。ブロードフォークは、簡便ながらも効果的なツールであり、No-Till農法を支える重要な役割を果たしています。

ティラーを使った表面整地のポイント

Neversink Farmでは、ティラーを使用して畝の表面を整地する工程が取り入れられています。ただし、ティラーは従来のように土壌を深く耕すためではなく、表面のごく薄い部分を軽く整えるために使用されます。「ティラーは、堆肥や有機肥料を均一に混ぜ込み、種まきに適した平らな畝を作るために活用しています」とコナー氏は言います。

この表面整地は、植え付け後の生育を均一にするうえで重要です。不均一な肥料散布は作物の成長にムラを生む可能性がありますが、ティラーを用いることで肥料が均等に混ざり、畝全体が均一な状態に整います。

また、ティラーを軽く使用することで、畝の自然な層構造が保持されます。深く掘り返すのではなく、表面を軽く撫でる程度の作業が、土壌の健康を保ちながら効率的な整地を可能にします。この技術は、時間と労力を節約しつつ、精密な種まきや植え付けに適した環境を整えるための重要なプロセスです。

Seederを使った効率的な植え付け方法

Neversink Farmでは、Seeder(播種機)を活用して効率的に種をまいています。このツールは、畝の整地状態や作物の種類に応じて異なるモデルが使用されます。「Seederを使用する際は、畝が平らで均一であることが不可欠です。これにより、種が正確に一定の間隔で配置され、発芽率が向上します」とコナー氏は強調します。

例えば、Jang Seeder(日本でいういわゆる種まきごんべえ)は、わずかな凹凸でも対応できる優れた性能を持ち、堆肥や作物残渣が多少残る畝でも使用可能です。一方で、精密な播種を求められる小さな種子には、多列Seederが適しています。コナー氏は、「Seederの選択は、作物や畝の状態に合わせて柔軟に行うべきです」と述べています。

また、紙ポットを用いる場合、根や堆肥の影響を受けにくい設計のSeederが適しています。このようなツールの適切な活用は、労力を削減し、播種作業を効率化するうえで欠かせません。Neversink Farmでは、播種後の成長を支えるため、堆肥や肥料の均一な散布と、適切な播種間隔を常に心掛けています。

No-Tillの課題と可能性

畝の転換作業における実践的アプローチ

No-Till農法における最大の課題の一つが、畝の転換作業です。収穫が終わった畝を次の作付けに向けて準備する際、従来の耕起農法ではトラクターやティラーを使用して土壌を掘り返し、新しい作物を植え付ける準備をします。しかし、No-Tillではそのような土壌の攪拌を避けるため、別のアプローチが必要となります。「収穫後の作物残渣はそのまま土壌に残し、春に堆肥や肥料を畝の表面に散布します」とコナー氏は語ります。

また、植物残渣が厚く残る場合には、ティラーを使用して表面を軽く整地することが有効です。この方法により、土壌層を保持しながらも新しい作付けの準備を効率的に進められます。また、場合によってはフレイルモアのような軽量な機械を用いて植物残渣を破砕し、そのまま畝の表面を覆う形で次作に利用することも可能です。このように、No-Tillの転換作業は労力を抑えつつ、土壌の健康を維持する工夫が求められます。

規模拡大に伴う生産性の変化と調整

Neversink FarmのNo-Till手法は、小規模農場での高い生産性を支える重要な要素ですが、規模を拡大する場合にはさらなる調整が必要です。「小さな畑での成功をそのまま大規模農場に適用するのは難しい」とコナー氏は指摘します。例えば、1エーカー(約0.4ヘクタール)以下の農場では高価値作物の集中的な栽培が可能ですが、面積が増えると同じ方法では対応が難しくなります。

規模が拡大すると、新たな顧客層を獲得し、作物の多様性を増やす必要が生じます。しかし、「高価値作物だけを大規模に栽培し続けることは現実的ではない」とコナー氏は述べています。結果として、作物の単価が低下し、面積あたりの収益が減少する可能性があります。

そのため、規模拡大を進める際は段階的に進行し、農場の運営がスムーズに行える範囲で調整を行うことが重要です。このように、No-Till手法を適用する場合でも、規模に応じた生産性の調整が求められることを理解しておく必要があります。


5. No-Tillの課題と可能性

畝の転換作業における実践的アプローチ

No-Till農法における最大の課題の一つが、畝の転換作業です。収穫が終わった畝を次の作付けに向けて準備する際、従来の耕起農法ではトラクターやティラーを使用して土壌を掘り返し、新しい作物を植え付ける準備をします。しかし、No-Tillではそのような土壌の攪拌を避けるため、別のアプローチが必要となります。「収穫後の作物残渣はそのまま土壌に残し、春に堆肥や肥料を畝の表面に散布します」とコナー氏は語ります。

また、植物残渣が厚く残る場合には、ティラーを使用して表面を軽く整地することが有効です。この方法により、土壌層を保持しながらも新しい作付けの準備を効率的に進められます。また、場合によってはフレイルモアのような軽量な機械を用いて植物残渣を破砕し、そのまま畝の表面を覆う形で次作に利用することも可能です。このように、No-Tillの転換作業は労力を抑えつつ、土壌の健康を維持する工夫が求められます。

規模拡大に伴う生産性の変化と調整

Neversink FarmのNo-Till手法は、小規模農場での高い生産性を支える重要な要素ですが、規模を拡大する場合にはさらなる調整が必要です。「小さな畑での成功をそのまま大規模農場に適用するのは難しい」とコナー氏は指摘します。例えば、1エーカー(約0.4ヘクタール)以下の農場では高価値作物の集中的な栽培が可能ですが、面積が増えると同じ方法では対応が難しくなります。

規模が拡大すると、新たな顧客層を獲得し、作物の多様性を増やす必要が生じます。しかし、「高価値作物だけを大規模に栽培し続けることは現実的ではない」とコナー氏は述べています。結果として、作物の単価が低下し、面積あたりの収益が減少する可能性があります。そのため、規模拡大を進める際は段階的に進行し、農場の運営がスムーズに行える範囲で調整を行うことが重要です。

このように、No-Till手法を適用する場合でも、規模に応じた生産性の調整が求められることを理解しておく必要があります。

No-Tillが環境保護と農業の未来に与える影響

No-Till農法のもう一つの注目すべき点は、環境保護への貢献です。土壌を攪拌しないことで、土壌層が保持され、二酸化炭素の排出が抑えられる効果があります。「No-Tillは、土壌中の有機物を保持し、気候変動の緩和に貢献する持続可能な農法です」とコナー氏は語ります。

さらに、土壌が常に覆われていることで、侵食が減少し、土壌の健康が長期的に保たれます。この方法は、地球規模での土壌劣化を防ぐ取り組みとしても評価されています。また、No-Tillは農業者自身にもメリットをもたらします。例えば、燃料や機械の使用量が減少するため、コストの削減が可能です。

一方で、No-Tillを成功させるには、高度な計画と細やかな管理が必要です。作物の選定や肥料散布、雑草管理など、多くの要素を総合的に調整しなければなりません。しかし、このような課題を克服することで、No-Tillは未来の持続可能な農業の一翼を担う可能性を秘めています。

おわりに

Neversink FarmのNo-Till手法は、持続可能で効率的な農業を実現する一つの理想形を示しています。「耕さない」というシンプルな哲学のもと、土壌の健康を保ちながら高い生産性を維持するこの手法は、小規模農場だけでなく、大規模農業にも応用可能な可能性を秘めています。

特に、土壌層を保護しながら有機物を利用することで、地球規模の環境保護にも寄与できる点は、現代の農業における重要な課題への一つの解答となるでしょう。また、雑草管理や施肥、作物の植え付けといった具体的な実践例は、多くの農業者にとって参考になるポイントが多いはずです。

しかし、No-Till農法を成功させるには、細やかな管理と計画が求められることも事実です。畝の転換作業や規模拡大の際の課題、さらには土壌特性や気候条件への適応など、各農場に応じた工夫が必要となります。

それでも、Neversink Farmの経験から学べることは多く、農業の未来に向けた新たな視点を提供してくれます。農業に携わる方々が、この手法をヒントに自らの農場に最適な方法を見つけ、より良い土壌環境を作り出す一助となることを願っています。

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