昔の知人のつてで、某大企業からヒアリングの依頼。
新規事業の検討の一環として、新規就農者向けの農機レンタルサービス(+派生サービス)を考えているとのこと。農業とはまったく関係がない業界の会社である。
依頼の内容は率直。
「新規就農者の立場として、こんなサービスがあったら嬉しいか。感じていることを聞かせてほしい」という趣旨。
私自身、まだ駆け出しの側。語れることは限られる。
それでも、いま現場に足を置いている立場として、思うところはある。備忘も兼ねて書いておく。
ちなみに先方のリーダーの方はご実家がお米農家とのこと。
農業とは関係のない世界に出ても、心のどこかで農業を気にかけて、何かできないかと考えて下っているよう。その話をきいてぐっと親近感が湧きました。
AIの話が増えるほど、一次産業の話も増えている気がする
少し話がそれる。
最近PIVOTでも「AI時代に、現場仕事(ブルーカラー)が相対的に強くなる」系の話が取り上げられていたらしい。
私はPIVOTは見てないのだが、前職の上司から「君の選択は間違ってなかったよ」といってこの動画のリンクが送られてきた。
【ホワイトカラーの8割は消滅する:冨山和彦】
一次産業への関心は、以前より耳に入ってくるようになった気がする。
「AIの時代なのに農業?」というより、「AIが進むほど、最後に残るのは現場の仕事でもある」みたいな見方。そういう言い方が、以前より自然に受け止められる空気。
過去にも、食品メーカーなどが農業に入ってきた時期があった記憶。うまくいかず撤退、という話も少なくなかった印象。今回がどうなるかは正直分からない。
ただ、農業に関心が集まるのは基本的には良いこと。
その中で、自分がちゃんと生き残れるかどうか。結局そこがいちばんの関心事。
農機レンタルの話を、あえて2つのタイプに分けて考えてみる
今回の相談を受けて、「どんな人がレンタルを欲しがるのか」を考えてみた。
もちろん、現実はもっとグラデーション。ここでの区分は雑な整理である。
- ① 借入や投資を前提に、機械化・効率化を進めていく新規就農者
- ② できるだけ借入を避けつつ、身の丈で始めたい新規就農者
前者は、トラクターや作業機の導入も含めて「早めに整えて回す」方向。
後者は、手作業も織り交ぜつつ「まずは倒れない」方向。
この2つでは、レンタルに期待するものが少し違って見える。
②(借入を抑えたい側)にとってのレンタルは、たぶん“買わずに済む保険”に近い
②に当てはまりやすいのは、多品種少量の形になりがちな新規就農者。
ここで農機の話をすると、どうしても避けにくい事情がある。
たとえば、農機は「買った瞬間からお金が戻る」タイプではない。
使う時期が限られたり、作業が分散して稼働率が上がらなかったり、思ったより出番が少なかったりする。
- 使うのは年に数回だけ
- でも購入費は大きい
- 置き場所や整備、故障対応も必要
こういう状況になりやすい。
この場合、レンタルは「便利だから借りたい」というより、
「買って身動きが取れなくなるのは避けたい。必要な時だけ使いたい」という意味合いが強くなる気がしている。
一方で、ここが難しいところでもある。
“必要な時だけ”というニーズは、利用者にとってありがたいが、提供側の収益は読みづらい。借りる頻度が上がりにくいから。
このあたり、私の想像が混じる。とはいえ、②向けのレンタルは、成立のさせ方がかなり限定されるかもしれない、という感触はある。
供給側の視点も少しだけ──①向けと②向けでは、喜ばれ方が違いそう
今回のヒアリングは「どんなサービスが嬉しいか」という問い。
それに答えるなら、①と②で喜ばれ方が違いそう、という話になる。
- ①の人にとって:効率化や作業速度を上げる“道具の手配”としてのレンタル
- ②の人にとって:買わずに済ませるための“必要な日だけの手段”としてのレンタル
どちらが良い悪いではない。
ただ、同じ「レンタル」という言葉でも、期待が違う。ここを混ぜたままサービスを作ると、利用者側も提供側も苦しくなる可能性がある、くらいの話。
そう考えると、自分の立場では「大型投資は避けたい」と感じる
ここからは、かなり個人的な話。
私のように資本の後ろ盾がなく、借入もできれば避けたい立場だと、大型の設備投資は慎重にならざるを得ない。
ただし、誤解がないように書くと、
大型投資を避けたからといって、経営が急に良くなるわけではない。
むしろ、投資をしないまま進めば「弱小零細として地道に続ける道」が開きやすくなるだけ、という面もある。
それでも、大きな固定費や返済がある状態でコケるよりは、まず“倒れにくさ”を優先したい。そういう感覚。
大きなお金を使わない、という選択は、成功確率を上げるというより、失敗の仕方をなるべく重くしないための工夫。今の私はそう捉えている。
結局、投資しないなら別の工夫が必要になる。
販売の組み立て、リピートの作り方、作業の回し方、信頼の積み上げ。そういうところで前に進むしかない。



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